• 小宮山剛

「いい本売ってるな」って思ったらね、かつて自分がその店に売った古本でしたよ。

去る6月19日の夜9時から深夜にかけて、第4回の積読読書会が開催された。この記事の題名は、同会において発された名言のうちの一つをそのままとっている。


いいものか悪いものか、積読をする人(積読人=つんどきんちゅ、ツンドキスト、積読家=tsundocker)は脊髄反射的に本を買うところがある。まさにこの反社・・・いや反射行為こそが日本の出版経済を支えていると言ってよいのだけれど、自分で売った本を自分で買い戻し続けるというのは、これは新しい循環型経済の発展であるとしか言いようがない。積読は今や、里山経済的循環を体現しうるまでのソーシャルビジネス的様相を帯びてきたのだ。


📚「桜桃忌編」の名目は何処へ……

そして何と言ってもこの日は「太宰治の生まれた日」であり「死亡が認定された日」という、いわゆる桜桃忌であったのだけれど、誰も積読に太宰治の著作本を出さなかった。一人も、である。お一人だけちょろっと『パンドラの匣』をお示しくださる良心をお持ちの方がいらっしゃったが、それも0.2秒くらいでオンライン会議の画面から消え去ってしまった。


その他に太宰治に関連するものがあったとすれば、紹介する「本」ではなく「酒」として持ち込まれた電氣ブランであった。たしかに『人間失格』でも電氣ブランが登場し、そこでは「酔いの早く発するのは、電気ブランの右に出るものはないと保証し…」と、ばっちりヨッパライの証とされている。


こうなるとイヨイヨ何の会なのか怪しくなってくる。或る人は読書会に本を持ち込まず酒を持ち込みお気にいりのグラスで一杯やりこみ、一方或る人は或る人で大量の本を背景いっぱいに積みあげている。読んでいるのではなくて飲んでいる人がいれば、飲んでもいるし読んでもいる人がいるし、はたまた飲まずして読んでいる人もいる。もちろん途中で風呂に入る人もいる。


だいたいのところ主催者自身が太宰治ではなくてユニクロの村上春樹Tシャツを着ていて(かっこいいよ!)、別の参加者の方と「オソロ」だと言って喜んでいる(すごい!)。


・・・この自由さ。このあけっぴろげな開放感。誰もエラくない、何にも縛られない、それでいて本質的には人生そのものを左右しうる重大さをはらんだ時間。これこそが積読読書会であり、読書という活動の実態なのである。

いいですか、積読読書会は真面目なのです。


・・・本当ですよ。


📚第4回積読読書会で紹介された本たち

その証左として、第4回積読読書会では下記のような神々しい本たちが紹介された。

(各商品のリンク先については、小宮山剛のnote記事に記載しております。)


・フランソア・ヴィヨン全詩集


・脳と森から学ぶ日本の未来


・オカルト入門


・資源争奪の世界史


・鷹狩の日本史


・本棚から読む平成史


・ボクたちはみんな大人になれなかった


・月と六ペンス


・電氣ブラン


・フランス敗れたり


・ドキュメント日本人




それぞれに本や、積読協会への勧誘や、電氣ブランをもちご満悦の皆さん。開催者にいたってはスクリーンショットを撮ることに夢中となり何にも持っていない。けれど、何か他には代えがたい達成感を画面の端々から感じることができるのではないだろうか。


📚本の買い方や流通を考える

冒頭で引用したご発言は、まさにツンドキストの精神を表す象徴的な響きをもっている。


「いい本売ってるな」って思ったらね、かつて自分がその店に売った古本でしたよ。

我々積読家は本を頻繁に、大量に買う。だからこそ本の買い方も考えたいよね!本の流通も幸せを呼び込むように考えたいよね!という話が、第4回積読読書会で提案された。


ほらね、真面目な会でしょ。


さっそく私は、上述のとおり本のリンクをA〇azonから出版社直リンクや古書店さんのものに変えた。日本の出版社さんがもっと元気になるためにできることとして、その一歩目。紹介先を、通販サイトではなくて直リンクにすること。


だいたいのところ、私がメインの司書「クリエイティブ司書」を務めている椎葉村図書館「ぶん文Bun」の本の買い方そのものが、日本の出版社・・・あるいは自治体そのものを元気にさせる要素を孕んでいるのだ・・・。とまぁ、この話は非常に長くなるので、詳しくは下記のセミナー動画をご覧いただくなどして捕捉していただきたい。



さてさて、本を買う時だけでなく本を売るときにも、我々にできることがある。実は僕が出版界に興味を持ち始めるきっかけになった存在であるバリューブックスさんという長野県・上田市の企業さんがあるのだけれど、そこの活動がとても面白いのでご紹介したい。


📚バリューブックスさんを使ってみよう

実は、ほとんどの人がバリューブックスさんを知る最初のきっかけというのがアマゾンだ。アマゾンで本を買おうとすると、バリューブックスさんを経由することがよくある。バリューブックスさんが「ブックレスキュー」という社会的に意義ある活動をしていらっしゃる以上、あるいはアマゾンで本を買うことも悪くないことなのかもしれない。


バリューブックスさんの社会貢献のひとつが「本で寄付する“チャリボン”」である。


こちらのページに、古本の取引価格がどのようになっているのかや、どのような本が寄付につながるのか、どんな方へ寄付が届けられているのかということが記されている。


よく「要らない本を図書館に寄贈したい」という方がいらっしゃるが、元々要らない本を要るという図書館は当然少ないので、こうした誰かを幸せにする仕組みに載せてあげるほうがよっぽど建設的かと思う。


そして、バリューブックスさんがプロジェクトパートナーとして古本の流通実務を担務しているのが「ホンデリング・プロジェクト」。こちらは、積読読書会参加者の方からご紹介をいただいた。


皆さんから本を寄贈していただき、その売却代金をご寄付として、犯罪被害に遭われた方々への支援活動に役立てるプロジェクトです。「本(ホン)で支援の輪(リング)が広がってほしい」という願いを込めて名づけました。 (上記WEBページより)

「犯罪被害に遭われた方々への支援活動」と使途に具体性が伴っていることで、あるいは支援意識も高まるのかもしれない。


📚本を積むのは徳を積むこと

積読読書会という、善良で徳の高い人々の集まり・・・なに徳が高いとはどの口が言うか、だと?


そりゃ、積読家はみんな徳が高いと決まっているではないか。何といっても、本を積むことはそのまま徳を積むことであると第4回積読読書会でも言われたし、それはきっとプラトンの時代から言われているだろう。紙だろうが羊皮紙だろうがパピルスだろうが、本というものは積むだけで徳となり、それ自身から幸福の波長が発散され続けるのである。


・・・そんなアヤシイ秘密の水みたいな論はおいておくにしても、こうして本を遊ぶ楽しみに浸る人々が本を持ち寄って、本の流通までも真剣に考えて、それでいてお酒も嗜みながらお風呂にも入りながら楽しくわいわいやる会というのは非常にスバラシイと思う。今回の積読読書会は、そういう思いを更に強くした桜桃忌の夜であった。


第4回積読読書会は深夜12:30くらいまで続きましたものの、途中での中締めはたしか22:30くらいでしたのでご安心ください・・・。積読を紐解いた感想をお伺いできない方もいらっしゃいまして、大人数で開催することの喜ばしさと心苦しさが同居する読書会でございました。


とはいえ、存分にお楽しみいただけたことに変わりはないのではないかと想像し、願っております。また次回もどうぞよろしくお願いいたします。


📚第5回積読読書会は7月31日

一般的な文学ファンであれば、7月の土曜日というと7月24日の河童忌(芥川龍之介の命日)を推すのであろう。あるいは小宮山剛の誕生日(7月26日=せんべろ忌=中島らもの命日)を祝いたいという方も全国で8,000万人ほどはいらっしゃることだろう。


しかし私は日本三大秘境・椎葉村に住むものとして、逃してはならない7月の記念日を知っている。それは、日本の民俗学の開祖・柳田國男の生誕日(1875年7月31日)である。


椎葉村での調査を経て彼が著した『後狩詞記』こそが日本の民俗学のはじまりと言われている。そんな椎葉ゆかりの人を差し置いて、別日に設定するわけにはまいらんだろう。


・・・そんなわけで、第5回積読読書会は7月31日に開催いたしたい。時間は多少の前後こそあれど、また夜の時間としたいと思う。できれば19時からとか、20時からとか、すごく平和な時間に開催することを検討いたしたい。


それではまたの機会までご安全でお幸せに、本と徳を積みながらお過ごしください。


極上の積読ライフをあなたに。

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