• 小宮山剛

2019年本屋大賞は瀬尾まいこさんに

最終更新: 2019年4月23日

きましたね、本屋大賞。ということで改めて瀬尾まいこさんの本について・・・。いやそれだけでなく、食事×本のおもしろさについて、そして最近小宮山の食生活がかわってきたことについて。


栄えある本屋大賞は瀬尾まいこさんの『 そして、バトンは渡された』に与えられたわけですが、伊坂幸太郎さんや三浦しおんさん平野啓一郎さん、そして我が愛する森見登美彦さんなどの人気作が立ち並ぶ中の受賞でした。本屋大賞というと直木賞と一線を画す賞としてみられることもあり、書店員の「これぞ本当に売りたい一冊」を推薦する賞です。「と、言うわりにベストセラーばかり並んでんじゃん」という批判もされやすいこの賞ですが、書店での売れ行きを左右する機会であることには間違いないんでしょうね。


さて今回の受賞作家である瀬尾まいこさんですが、小宮山の本棚には『幸福な食卓』『優しい音楽』『卵の緒』の三冊だけありました。ハードカバー本についてはかつて小宮山がうら若き高校生だった頃、強い共感と共に読み走った記憶があります。とくに『幸福な食卓』は「父さんをやめようと思う」父親だとか、ちょいとはずれた直ちゃんだとか「当り前の振舞いをしなくてもいいのかな」と思わせてくれる人が多く登場する小説で、心地よかった。

『幸福な食卓』を読んでからというもの、僕は家族での食事シーンがあるだけで「いい小説(映画)だなぁ」と思ってしまうようになっちゃったりして。『海街diary』とか、リリー・フランキーさんの『東京タワー』で樹木希林さん扮するオカンが皆に手料理をふるまう場面なんてとってもぐっときちゃうわけです。もちろん瀬尾まいこさんは食事シーンの名手であって、短編集『卵の緒』でもその力はいかんなく発揮されていました。


「家庭での食事」


この点について「おいおいお前が家庭での食事の大切さを知っているとは到底思えない」と言いたい人が多くいそうですね。たしかに、東京・世田谷では毎晩外食という生活でした。だって素敵なお店がそちこちにあるんだもん。


でも、椎葉に来てその生活が大きく変わってきました。ほら写真をご覧ください。みっちりとしたお肉、これ「しし肉」なのです。脂があまくて美味しい・・・。世田谷区某所で一人2万円くらいのコースで食していたジビエよりぜんぜんうまーーーいです。


こうして手のこんだ料理をゆっくり、同僚と囲んで食べるなんて機会は東京ではなかったなぁ…と。もちろん福岡でもありませんでした。そしてもちろん自分で作れるわけではありません(笑)江崎シェフ、ごちそうさまでした!


泣く子も黙るような事実を書き添えておくと、小宮山がなんと自炊しています。家に帰って、ちょいと作って、へたくそな料理に涙を浮かべながら食べています。あぁ・・・学生の頃から頑張っておけばよかった。料理動画の「クラシル」をダウンロードしましたが、とりあえずドイツ語で書かれた流体力学の専門書を読むくらいには意味わかりませんでした。それでも生きていく、つよく。


さて、かと言って僕が東京での食事生活に飽き飽きしたかというとそんなことはありません。鬱蒼と生い茂るビル群の隙間に佇むビストロで、二十は年上の美女と待ち合わせをして。そんなシチュエーションにグッとくるワインをお勧めするウェイターの声をさえぎっちゃって自分好みの(その日の気分の)スピリッツをスパッと決めちゃう。なんて、そんなことはしたことないけれど、そんな雰囲気を感じながら恍惚の読書体験ができるのが『スペインの宇宙食』(菊池成孔)です。


音楽家としての菊池さんを知らなかった僕としてはこの本と出会えたことが僥倖、僥倖。スペイン語の勉強本を検索しているときに「ふっ」と見つけちゃったのだから、これはもうセレンディピティとしか言いようがないわけです。文体をみて、いくつかのシーンを感じて、ひとめぼれ・・・でした。


「食事」・・・ただそれだけで、今日は7つの作品がつながりました。古本市の神よろしく、もっともっとつなげられるように精進します。


※おすすめがあればぜひ!


というわけで本日は『スペインの宇宙食』のとびきりクールな一文を引用してお別れです。


Hasta luego


「蛸や烏賊を茹でる巨大な釜や、仕入れた魚を入れるクラッシュアイスの沢山詰まった木箱、それらをネタにしてゆく職人の包丁さばき、大量に焼かれる夢のような伊達巻、煮切り醤油を作る鍋、煮貝や干瓢の釜、穴子を焼く炭火、床一面に引かれた木製の簀の子、寿司酢と手桶、湯飲みとお茶、徳利と日本酒、檜のまな板、流される井戸水、湯気、氷、火、そういったあらゆる粋で鯔背なマテリアル群が放つ、あまねく天国のような芳香と光、それらのアンサンブルがグルーヴする、スペクタキュラ―としての寿司屋の板場という奇跡の空間に、僕は完全にノックアウトされ、フェティッシュでノスタルジックな官能をすっかり刷り込まれた。・・・。」

『スペインの宇宙食』(菊池成孔:小学館文庫、2009)

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